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スミタス小説「おひとりさま、家を買う」(12)

スミタス小説「おひとりさま、家を買う」(12)

スミタス

中古住宅が売買されるまでには、いくつものストーリーがあります。売主家族、買主家族、不動産業者やリフォーム業者など、売買に関わる人たち全てに日々の生活があり、人生があり、考えも思いもさまざま。

そんな、家の売買にまつわる物語をお届けするシリーズ。
第2弾の主人公は、東京の独身OLで実家暮らしをしている30代半ばの“私”です。

周囲に流されて始めた婚活を辞め、自分のやりたいことをやると決めた“私”は、昔からの夢だった“カッコイイ”自分の家を持つことや憧れの北海道で暮らすこと、犬を飼うことetc…に思いを馳せ、夢の実現に向かって行動していきます。

様々な問題や悩み事にぶつかりながらも「札幌市内で中古マンションを購入してリフォームする」というアイディアにたどり着いた“私”。中古物件に強く建物診断やリフォームなどのサポートにも手厚い不動産関連企業と出会い、ついに未来の“自分の家”となる物件を決めます。

インスペクションや定額制のリノベーションプランといった中古物件にまつわる知識も日に日に増えていく“私”。 ようやく様々なことがまとまりかけ、デザイン選びや間取りなど、具体的な家づくりへの計画を立てていたところで、まさかの新たな問題に直面します。

兄夫婦との同居に向けて実家をリフォーム予定の母が、突然“私”との同居を希望してきて…!?

(第12回)もうひとつのリノベーションプランPARTⅡ

スミタス

「自分の家を持つ」というのは、一口に言っても、本当に様々なケースがあるものだな、とつくづく思う。きっとひとつとして誰かのどこかの家と同じパターンっていうのはないんだろう。

私1人で暮らすための家でさえ、あれこれと悩みはたくさんあるわけだから、両親と兄夫婦。4人の大人が意見を出し合って建てる家となると、全員の希望が合致して同じ方向を向いて…というのは余計に難しいものなのかもしれない。

それにしても私に新たに降ってきた「母との同居」問題。

当初は、兄夫婦や父と意見が折り合わない母がその場で思いついた、真剣な発言ではないと全員が思っていたのだけれど…。

「この家を建てる時だってね、ほとんど何もかもお父さんが決めちゃって。それでもまぁ、結局はあなたたちも無事に成人したし、みんな健康で暮らしてきたわけだし、私の気に入るように変えてきたところもあるからいいけど…。家族が増えるし掃除も楽になる訳だからある程度は仕方がないかな、と思ってお兄ちゃんたちの希望を優先してきた。でもどうしても許せないのは…」

母がいうには、問題は庭と裁縫部屋とキッチンなのだそうだ。

結婚して以降、ずっと専業主婦を貫いてきた母は、趣味と実益を兼ねた裁縫と料理が生きがいだ。庭では季節の野菜やハーブを育て、裁縫部屋と呼んでいた一室にはプロが使うようなミシンやトルソー、パターンが引ける大きな机などが置いてある。決して広くはない上に私から見るとごちゃごちゃしているキッチンも母の気に入りの場所だ。

兄夫婦の希望で、リフォーム予定の家は「生活感を徹底的に出さない」をテーマにしているらしい。生活感を隠すための収納スペースや家族が増える分、裁縫のための部屋はなくなり、庭は手入れが大変だという理由と駐車スペースを拡大するために、家庭菜園ができるだけのスペースはなくなる予定なのだそうだ。

構造上の問題と広さの問題でキッチンを2つ造ることは難しいため、今後中心になって家事を担当する兄嫁の希望に沿って造る予定のキッチンは、母に言わせれば「無機質」なのだそうで…。

「でも、なんでもお兄ちゃんたちに任せっきりにしないで、ある程度希望を伝えておけば良かったんじゃ…。それに今からでも、もう少しどうにかできそうな問題のような気もするけど…」

「希望なら遠慮しながらも言ってきたわよ。“できるだけ叶えられるようにするから何でも言って”って最初は言っていたんですもの。でも全部“無理”で片付けられてきたの。それに“もう少しのんびりした方がいいよ”なんて言って人を年寄り扱いして…。最終案がアレだと思うと、もう私の居場所なんてこの家にはないも同然よ」

双方の話を聞いてみると、兄夫婦は兄夫婦で、両親への思いやりで良かれと思って考えたところもたくさんあるようだけれど、こうなると母は頑固だ。

「言っておくけど、私の家はもっと狭いし、裁縫部屋どころかお母さんの部屋だって用意できるかどうか…。当然ながら庭もないし、キッチンももともとの1LDKの間取りに見合った普通の大きさのものにする予定だよ?」

「それでも、自分のことを“ないがしろ”にされるよりはずっと良いわよ。細かく納得のいかないところを挙げていったけど、一番の問題はそういうことなの。あなただって慣れない場所でお仕事を始めるわけだから、家事をしてくれる人がいたら楽でしょう。裁縫部屋はどこか別に1室借りてもいいわね。家庭菜園だって北海道ならどこかの畑をシェアして使わせてくれるところもありそうだし…」

どこまで本気なのかまだ判断がつきにくいところもあるけれど…母はどうやら来週、札幌での私の家の打ち合わせには付いてくるつもりらしい。

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「今さらそもそもの話なんだけど…、お父さんとは別居するっていうことで良いわけ?まさか…離婚するとか言わないよね…?」

札幌へ向かう道中、母に尋ねてみた。
数日経ってもあまり冷静になったようには見えない母。ここへ来て現実を見ていくうちに、気が変われば良いなと思って、結局こうして一緒に打ち合わせに行くことになったのだけれど…。

「“好きにしろ”っていうからには、別居でも構わないっていうことなんでしょう。離婚は今すぐにという訳ではないけれど、いずれそうなってもおかしくはないわね。でも今どき珍しくもなんともないわよ。熟年離婚っていうの? あなたが以前見てきた家に、離婚がきっかけで家を手放したっていうケースがあったけれど、その逆ね。家を手放すことがきっかけで離婚するっていうのも“アリ”なんじゃないかしら」

どこか愉快そうにそう言う母だけれど、本当なら母だって父と一緒に暮らし続けたいはずだと思う。

内覧以来、初めて顔を合わせた担当者はいつものようににこやかに迎えてくれた。きょうはデザイナーさんやコーディネーターさんも顔を出してくれることになっている。

かいつまんで母が同行することや、もしかしたら母も同居するかもしれないことは事前に伝えてあるけれど、やはりみんな戸惑いは隠せないようだ。そりゃあそうだ。

「えぇ、もうね。私の部屋なんてなくてもいいくらいなんです。布団が1組置けるスペースがあれば。なんなら私はリビングで寝てもいいんです。でもそうね、収納は予定より少し増やしてもらった方がいいのかもしれないわねぇ。最近、ちょうど断捨離していたところですし、そんなに私物なんかは持っていかない予定なんですけれどね」

母の勢いに、私さえ負けそうになってしまう。

「それでもやっぱり狭くとも個人のスペースはあった方が良い気がします。もともとプランのひとつにあった、この広めのリビングに仕切りをつけてもう1部屋つくるという方向で考えていきましょうか? もちろん布団が1組敷けるスペースは十分取れます」

私と母の両方の顔を交互に見ながら、デザイナーさんが言った。

母はデザイナーさんが言い終わらないうちにうなずいたけれど、私はすぐに首を縦には振れなかった。もちろん1部屋つくることは構わないのだ。お客さん用のスペースがあったら良いな、と思っていたのだから。でもそれはあくまでお客さん用であって、母が暮らすとなると本当にこの家で良いのか、根本からやっぱり疑問に思えてくる。

「布団を2組…敷けるスペースとなるとどうですか? リビングがものすごく狭い感じになってしまうでしょうか? 泊まりに来るだけでなく、毎日使う部屋ならもう少し広い方が良いのかな、って。リビングはテレビと小さなテーブルとソファを置ければ良いし…」

そして、もし母が住むなら、父もいつでも自由に遊びにきて母の部屋に泊まれるようにすれば良いかな、と考えたのだ。いざとなって母がやはり住まないことになっても、両親が仲良く遊びに来てくれて、その部屋を使ってくれたらいいな、とも思った。兄夫婦もいつでも遊びにきてほしい。当初想像していたように甥っ子や姪っ子たちが長期の休暇で使ってくれても良い。

つまりはどうなっても良いようにしておきたい。ただ、望むのは家族みんな仲良くすることだ。

「そうですね…。おそらく思っていらっしゃる以上にちょっと狭いイメージにはなってしまうと思うんですけど、不可能ではないですよ。…あの…大丈夫ですか?」

気がついたら、色んな感情で涙が出ていた。
この年で、家族の仲違いやホームシックで涙するなんて自分でも驚いた。
隣に座っている母も目を丸くして私を見ている。

「そんなに私と暮らすのが嫌だったの?」
おろおろする母に、「そうではない」と返すのが精一杯だった。(続く)

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