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スミタス小説「おひとりさま、家を買う」(14)

スミタス小説「おひとりさま、家を買う」(14)

スミタス

中古住宅が売買されるまでには、いくつものストーリーがあります。売主家族、買主家族、不動産業者やリフォーム業者など、売買に関わる人たち全てに日々の生活があり、人生があり、考えも思いもさまざま。

そんな、家の売買にまつわる物語をお届けするシリーズ。
第2弾の主人公は、東京の独身OLで実家暮らしをしている30代半ばの“私”です。

周囲に流されて始めた婚活を辞め、自分のやりたいことをやると決めた“私”は、昔からの夢だった“カッコイイ”自分の家を持つことや憧れの北海道で暮らすこと、趣味のサーフィンやスノーボードをもっと楽しむこと、大きな犬を飼うことetc…に思いを馳せ、夢の実現に向かって行動していきます。

様々な問題や悩み事にぶつかりながらも「札幌市内で中古マンションを購入してリノベーションする」というアイディアにたどり着いた“私”。中古物件に強く建物診断やリフォーム・リノベーションなどのサポートに手厚い不動産関連企業と出会い、ついに未来の“自分の家”となる物件を決めます。

デザイン選びや間取りの変更など、具体的な家づくりへの計画を進めていく中、想像していないなかった新たな問題が。“私”の兄夫婦との同居に向けて実家をリフォーム予定の母が、突然“私”との同居を希望し始めたのです。

実家のリフォーム計画に納得のいかない母の決心は意外にも固く、“私”は当初の予定を変更し、家族が行き来しやすいような家へとリノベーション計画を変更することに。母とともに札幌へ出向き、打ち合わせを済ませた“私”は下見のつもりでペットショップである出会いを果たし…。

(第14回)新しい暮らしに向けて2〜母と私と、犬(!?)と

スミタス

「あら、ねぇこの仔、お値引きされてる。どうしてかしら?」

母の視線の先にいる仔犬は眠っているようだった。手足を丸め、その中にすっぽりと顔を埋めて巨大な毛のかたまりのようになっている。

値札をよく見てみると、確かに元の価格から値引きされているようだったけど、それよりも衝撃的な文字が目に入った。

「あら、ちょっと!ねぇ、この仔、ワンちゃんじゃないのね」

母も気づいたようだった。値札の上にはしっかりと「ノルウェージャンフォレストキャット(雄、1歳)」と書かれている。

「猫…みたいだね」
仔犬と仔猫のコーナーの境目の檻に入っていたので、犬だと思い込んだだけで、よく見てみると顔は見えなくても猫っぽいシルエットだな、と気づく。それにしても仔猫だと考えるとずいぶん大きいようだけど…。

母と私があまりにもじっと見ているものだから、気配を察したのかノルウェー君が少しだけ顔を上げた。

母と私を不思議そうな顔で交互に見る。眠っていたのかと思っていたけど、目はらんらんとしている。

「ノルウェージャンフォレストキャットって、ワンちゃんみたいに人懐っこくて賢い猫ちゃんなんですよ。名前の通り、ノルウェーの猫ちゃんなので、寒さにも強くて、昔はソリを引いていたなんていわれているくらいたくましいんです。猫ちゃんの中では、もともと大型種なんですけど、この仔はそれでもうちで販売するには少し大きくなり過ぎてしまって…それで、お値引きさせていただいているんですけど、病気もないしとっても元気な男の子なんです」

店員さんがそう言ったのが先だったのか、私達の心が動いたのが先だったのか。

とにかく、目が合った時にはもう家族になることがほとんど決まっていたような気がする。

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「そうなんです。それで、全部の部屋のドアにいわゆる“猫ドア”っていうんですか?
あれをつけたいんです。タワーやトイレ、ベッドを置く場所は洗面所の前の…そうです、あそこがいいかと。そうなんですよね。ペットは落ち着いてから飼おうと…。はい、いずれは、ということで犬を飼う予定でしたが、何故だか猫に。あのすみません…変更に次ぐ変更で…」

我ながら担当者さん泣かせだなぁと思うけど、ドアなんかの建具に関してはまだ決めていなかったこともあり、担当者さんはどこか楽しそうに快く変更点を受け入れてくれた。

東京にいったん連れ帰ることも検討したが、移動のストレスなどを考えて、私達の新しい“家族”は、引っ越しの日までペットショップで取り置きしてもらうことにしたのだった。

「大丈夫ですよ。決定してから“やっぱりこっちが良かった”“ここを変えたい”“あれはやめる”なんておっしゃる方も少なくないですから。一生に一度のお買い物ですから、それくらいとことん迷ったり悩んだりされても良いんじゃないでしょうか。それに、ご家族が増えて良かったな、と思う場面もきっとこれからたくさんあるはずです。

賃貸なんかだと“ペットは猫ちゃんのみ可”という物件もあるくらいで、猫ちゃんは吠えないし、お散歩の面なんかも考えると、お客様向きのペットかもしれませんよ。ちなみに私も猫派なんです。ワンちゃんも大好きなんですけどね。我が家には今2匹の…」

ひとしきり猫トークで盛り上がり、お互いの猫の写真をメールで送り合うことにして、電話での打ち合わせは終了した。なんと今後は猫の飼い方についてもアドバイスをしてくれるらしい。

猫を飼うなんて正直、想像したことがなかったのだけど、不思議なことに、決まる時はどんどん決まっていくもので、私と母は今やすっかり猫との暮らしを想像しては、盛り上がっている。私は暇を見つけては、ネットで猫の飼い方を勉強し、母の愛読書も今や猫に関するものばかりなのだった。

実家のリフォーム計画は順調なようで、兄夫婦はこのところ連日家に出入りして業者と打ち合わせをしている。母が口を挟まなくなった分、スムーズに進んでいるようだけど…父なんかは本当のところどう思っているのだろう。このまま流れに身を任せるつもりなのか、何か父なりの考えというものもあったりするのか…。近々話し合ってみなければならない。

私が家を買う。両親と兄夫婦が実家をリフォームする。単純にそれだけのことだったはずだけど、そこに人間が関わってくる以上、どうしたって物事は複雑になるのだ。住まいが変わる、住まいを変える、ってそういうことなんだな、とつくづく思う。

家のデザインやインテリアのイメージと合いそうな猫タワーを、もくもくとネットショップで検索していると、階下で盛り上がっている様子の兄夫婦の弾む声が響いた。(続く)

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