スミタス小説家を買う

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スミタス小説「おひとりさま、家を買う」(15)

スミタス小説「おひとりさま、家を買う」(15)

スミタス

中古住宅が売買されるまでには、いくつものストーリーがあります。売主家族、買主家族、不動産業者やリフォーム業者など、売買に関わる人たち全てに日々の生活があり、人生があり、考えも思いもさまざま。

そんな、家の売買にまつわる物語をお届けするシリーズ。
第2弾の主人公は、東京の独身OLで実家暮らしをしている30代半ばの“私”です。

周囲に流されて始めた婚活を辞め、自分のやりたいことをやると決めた“私”は、昔からの夢だった“カッコイイ”自分の家を持つことや憧れの北海道で暮らすこと、趣味のサーフィンやスノーボードをもっと楽しむこと、大きな犬を飼うことetc…に思いを馳せ、夢の実現に向かって行動を開始します。

再就職先や両親の反対など様々な問題にぶつかりながらも「札幌市内で中古マンションを購入してリノベーションする」というアイディアにたどり着いた“私”。中古物件に強く建物診断やリフォーム・リノベーションなどのサポートに手厚い不動産関連企業と出会い、紆余曲折を経て“自分の家”となる物件を決めます。

デザイン選びや間取りの変更など、具体的な家づくりへの計画が進んでいく中、想像していないなかった新たな問題が。“私”の兄夫婦との同居に向けて実家をリフォーム予定の母が、突然“私”との同居を希望したため、“私”は当初の予定を変更し、家族が行き来しやすいような家へとリノベーション計画を変更することに。

家族間のわだかまりが残る中、“私”はふと訪れたペットショップで、未来の相棒と運命的な出会いを果たします。目が合った瞬間に飼うことを決めたのはワンちゃんではなく、まるで“ワンちゃんのような”猫ちゃん。ノルウェージャンフォレストキャットの男の子でした。猫との暮らしに向けた準備もスタートし、「臨機応変」が板についてきた“私”ですが…。

(第15回)さらなる新しい“家族”!?

スミタス

「はい、それじゃあ壁紙は、一つ前に提案してくださった方に。あ、いえいえ。それも気に入っていたんです。ただ、色々見すぎて目移りしてしまったっていうか…。はい。あぁ良かったです。それではお願いしますね」

電話を切ると、またひとつ満足感があふれた。

はじめての家づくりは選択の連続だ。まずは家を買うのかどうか。戸建てなのかマンションなのか。新築なのか中古なのか。どこに住むか。どこの不動産やハウスメーカーに依頼するのか。

これまでもそうだったけど、リノベーション工事がスタートすると、またまた選択の機会が増えた。今の電話では、ギリギリまで決まらなかったトイレの壁紙をようやく決めた。
基本的には工事が終わるまでもう札幌には出向かない予定なので、私が次に自分の家と対面するのは、完成した後ということになる。

ワクワクする気持ちの方が大きいけれど、不安ももちろんある。信頼できる企業に任せているから大きな心配がないとはいえ、私が伝えきれなかった部分があったり、あれこれ迷ったせいで「あれ?なんか思ってたのと違う!!」なんていう事態にならないともいえないような気がして…。

完成した家を初めて見る日は、きっと高校や大学、就職の合格発表の時みたいにドキドキするんだろう。

まずは快適に暮らせる家になっているといいな、と思う。私と母、そして猫。みんなが快適だといい。
「ちょっといいかな?」
電話を終えたところを見計らって、兄が二階の私の部屋を訪ねてきた。父と母の様子は相変わらずだけれど、実家の二世帯リフォーム計画はその後大きな問題なく進んでいるようで、私の引っ越しに合わせて工事が始まることになっている。実家をリフォームしている間、父が仮住まいする家も決まったと聞いた。直近では問題がなさそうだと思っていたけれど…。

「どうかした?」
言い終わらないうちに、尋ねるまでもなく兄が私を呼ぶ理由が分かった気がした。

階下で、何やら父と母が言い争う声が聞こえている。

スミタス

1階に降りるとまず目に飛び込んできたのは、ソファーの上に置かれたタオルだった。

近くにかごのようなものも見える。父は両手に紙袋を抱えている。

「だから、お前が猫を飼いたいみたいだったから、それで…。同僚のうちで仔猫が生まれたっていうんで、それならちょうど良いな…と」

「だからそれが、何も分かってないっていうんです。何が“ちょうど良い”ものですか。これからこの家は工事が始まってこれから人が住めないようになるでしょう。その間、あなたが住むところに連れて行ったり、またこの家に戻したりすることになるんでしょう? 猫ちゃんはね、環境の変化に弱いんです。あちこち連れ回すことになって可哀想よ。こんなに小さいのに…」

なんと、父は知人から仔猫をもらってきたようだった。
タオルだと思ったものは、仔猫だったのだ。
ついこの間、ペットショップで見てきたどの仔よりも小さいみたいだった。

この家に突然連れてこられたグレーのしましまの美人は、でもそんな夫婦の喧騒をよそに、すやすや眠っている。

母は毅然とした態度で決まり悪そうな父を睨みつけている。

「本当に、考えなしにこんなことするなんて…信じられない。あなたが1人の間、きちんと面倒を見られるとも思えないし…」
「考えがないわけじゃない。お前が猫を飼いたがっているんだと分かったから、それでもらってきたんだ。この仔が心配なら、東京に残ったらいいじゃないか」

今まで父のこんな情けない声を聞いたことがあっただろうか。父の気持ちもわかる気がするだけに、私も兄も何か口を挾みたいところだけれど、とりあえず成り行きを見守るしかなかった。ただ、母は違う。父の今の言葉は火に油を注いだ。

「そんな風に生き物を利用する神経が信じられない、と言っているんです。札幌行きを辞めてほしければ、そう言えばいいんです。何もこんなことしなくったって…。なんてかわいそうなことするの…」

母の視線が仔猫に注がれる。

「父さんも、母さんに思いとどまってほしくて考えた結果なんだよ。それにほら、父さんの仮住まいはここから数百メートルのアパートだよ? こんなに小さいのに人間の都合で勝手なことをして…っていうのに変わりはないかもしれないけれど…。あ、ほら、うちの方で預かっても良いよ。子供たちも喜ぶからさ」

兄がようやく、しどろもどろ口を開いた。

「あなたたちの今の住まいはペット禁止でしょうが!出ていく直前にトラブルにでもなったらどうするの!」

母に思いっきりたしなめられて、兄は子供時代にそうだったように肩をすくめてしまった。
「それにしても、可愛い仔だねぇ。見てよ、こんなに小さいのにちゃんと顔を洗ってるよ」
すっかり猫派になってしまった私は、両親の揉め事などどこ吹く風で毛づくろいを始めた小さな仔の一挙手一投足に目が離せなくなっていた。

母がひとつ、大きなため息をついた。いや深呼吸だったのかもしれない。

「お腹は空いてるかしら? このくらいの仔って何を食べるのかしら? あなた、ちゃんとお世話の仕方聞いてきてくださった?」

「あぁ、もちろん聞いてきたよ。分からないことがあれば、すぐに電話しても良いことになっているし、割と近くに住んでいる人だから様子も見にきてくれると…。当面の食べるものや、必要なものなんかも譲ってもらったんだ。教えてもらって買ってきたものもあるし…。」

父はごそごそと手に持っていた紙袋から、お世話グッズを取り出した。

呆れ顔で時折父の様子を横目で見ながらも、母の視線はさきほどに比べてすっかり角が取れ、まっすぐ仔猫に注がれていた(続く)

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