スミタス小説家を買う

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スミタス小説「おひとりさま、家を買う」(5)

スミタス小説「おひとりさま、家を買う」(5)

中古住宅が売買されるまでには、いくつものストーリーがあります。売主家族、買主家族、不動産業者やリフォーム業者など、売買に関わる人たち全てに日々の生活があり、人生があり、考えも思いもさまざま。

そんな、家の売買にまつわる物語をお届けするシリーズ。
第2弾の主人公は、東京の独身OLで実家暮らしをしている30代半ばの“私”です。

周囲に流されて始めた婚活を辞め、自分のやりたいことをやると決めた“私”。
昔からの夢だった“カッコイイ”自分の家を持つことや憧れの北海道で暮らすこと、犬を飼うことetc…に思いを馳せ、実現を目指します。多くのことが手探りの中、一歩一歩行動に。

ある時「札幌市内で中古マンションを購入してリフォームする」というアイディアにたどり着いた私は、両親を納得させようと、まず家探しから始めてみようと考えます。

さっそく、中古物件に強い不動産関連企業を見つけ、いくつか物件をピックアップしてもらうことに。不動産売買の相談から、建物診断、リフォームなどのサポートにも厚い企業とあってここに全てを任せようと一安心したのもつかの間、物件情報を眺めている中で予算の問題が大きく“私”の心にのしかかります。

現在勤めている会社を辞めて札幌へと引っ越し、一時的に無職になる可能性が高い“私”には、ローンを組めない可能性があると気づきます。再就職について友人に相談すると、意外な“再就職”の方法、今勤めている企業が関連会社の札幌支社への出向を募っていることを知り…?

(第5回)両親の気持ち

「ご相談したいことがあるのでお時間を作っていただけますか」なんて、初めてのお願いだったから、使われていない会議室に呼び出した時の上司の表情はとてつもなく固いものだった。けれど話し終えてみると、上司の反応は、思っていたよりもずっと前向きだった。

「部下の夢を応援するのも、職務の一つかなって思っているから。長く頑張ってくれていただけに、確かにうちの部署を離れてしまうのは残念だけれどね」

上司が直接人事に掛け合ってくれることになり、私はひとまず出向希望者のリストにいれてもらえることになった。人事の調整次第では、早ければ半月くらいで結果がわかるらしい。

「映画関係の仕事をしてみたい」という再就職の夢もあったけれど、まずは優先順位を一つ一つ達成していくことが先決。私にとっての優先順位は「家を買うこと」が一番。私なんかには無理じゃないかと思うことだらけだったけど、ひとまず出向が決まれば、ローンの問題は解消できそうだ。

不動産会社にも今の事情をもう一度説明し、その間にも良い物件が出てきたら随時教えてもらえることになった。計画的に進めているようでいて、思いつきで行動してしまいがちな私の性格まで理解してくれているみたいで、電話やメールでも親身に相談に乗ってくれる。

私みたいな平凡で家に関する知識も皆無なOLが「家を買う」っていう大きな夢を叶えるためには、たくさんの人の協力や理解があって初めて実現できることなんだなぁとつくづく思う。

「でも、札幌の関連会社にだってまだ『行ける』と決まった訳でもないんだろう。話にならんな」

父の反応は相変わらず渋い。今日は、改めて両親に決意を語るため、早めに帰宅して一緒に夕食を囲むことに決めていた。

「この家を出て行きたい、自分の家が欲しいっていうだけなら、何もそんな遠くへ行かなくたって都内で探したっていいでしょう。そうすれば今のお勤めだって続けられるんだし。スノーボードやサーフィンだって、お休みのたびに旅行であちこち行ったらいいじゃないの」

ゆくゆくは私の兄家族との同居が決まっていることもあって、母は、私が家を出ていくこと自体には理解があるみたいだけれど、「遠くへは行ってほしくない」っていう考えみたい。

「さっきも言ったけれど、都内では予算的に私の理想の家を買うのは難しいの。それに、北海道で暮らすこと自体にも意味がある。趣味のこともそうだし、予算内で都内より広い家を持てるっていうのもそうだし、それにずっと憧れだったし、それから…」

少し言葉に詰まってしまった。これを言ったら両親はきっと寂しく思うに違いないから。

「…それから、東京で一人暮らしを始めるだけだったらきっと私は何も変われない。『いつでも両親が助けてくれる』。そういう環境に身を置き続けるのは、私にとっては意味がないことなの。私は変わりたい。用意されたレールに乗って、流されるだけの人生を変えてみたい。その足がかりが私にとって『北海道で家を買う』っていうことなの」

父は驚いたような顔で私を見つめ、母は目と鼻を赤くした。

「北海道にお嫁に行くとでもいうのなら、安心して送り出せるのに…。でもそれじゃあきっとあなたにとって意味がないのね。あなたの生きてみたい人生とは違うっていうことなのね…」

ハンカチで目頭を押さえ、うなずきながら母は言った。
父は無言のままだったけれど、きっと私が今言ったことを反芻しているんだろう。

「でも、反対されたまま家を飛び出そうとは思ってない。生まれてから今日まで2人にも、この家自体にもずーっとお世話になったんだもの。笑って送り出してもらいたい。分かってくれるまで、何度でもこうして話すよ」

「…確かに札幌は、いい街だ。出張で何度か行ったが、暮らしてみたいと思ったこともある。確かこのあたりはな、市場が近くて割と閑静な住宅街が側にあって…。…うまい店、見つけておけよ」

私が両親の前で広げていた物件情報に目を落としながら、父はそう言うと笑った。

まだ完全には賛成してくれていないけれど、両親とも理解をしようとしてくれているのが有難かる。

ふと、ダイニングテーブルのそばにある食器棚に顔を向けると、私と兄が小さい頃にいたずらをして、母が苦労しながら剥がした大量のシール跡が目に入った。きれい好きな母が大切に使ってきたキッチンも、よく見ると傷んでいる箇所がある。

私の誕生と同時に建てられたこの家も、もうすぐ二世帯住居に生まれ変わる。
同じく時を刻んだ私も、同じように生まれ変わるんだ。(続く)

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