スミタス小説家を買う

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スミタス小説「おひとりさま、家を買う」(7)

スミタス小説「おひとりさま、家を買う」(7)

中古住宅が売買されるまでには、いくつものストーリーがあります。売主家族、買主家族、不動産業者やリフォーム業者など、売買に関わる人たち全てに日々の生活があり、人生があり、考えも思いもさまざま。

そんな、家の売買にまつわる物語をお届けするシリーズ。
第2弾の主人公は、東京の独身OLで実家暮らしをしている30代半ばの“私”です。

周囲に流されて始めた婚活を辞め、自分のやりたいことをやると決めた“私”。昔からの夢だった“カッコイイ”自分の家を持つことや憧れの北海道で暮らすこと、犬を飼うことetc…に思いを馳せ、夢の実現に向かって行動していきます。

インターネットを通して“おひとりさま”の家の購入や北海道への移住について調べていくうちに「札幌市内で中古マンションを購入してリフォームする」というアイディアにたどり着いた“私”は、中古物件に強く建物診断やリフォームなどのサポートにも手厚い不動産関連企業を見つけ、物件探しをスタートします。

両親の反対やローンの組み方・今後の生活にも関わる転職の問題、次から次へと湧いてくる悩みに直面しながらも、周囲のサポートや理解を少しずつ得られるようになり、一歩一歩問題をクリアに。内覧のため、はじめて現地へ足を運びます。

期待と不安が入り交じる中、担当者とともにまずは1軒目の内覧に向かいますが…!?

(第7回)売主の人生と“家”の気持ち

築40年以上の物件となるとこういうものなのか…。
もらった資料にあった写真から抱いていたイメージとのギャップに、少々戸惑っているうちに担当者がインターフォンを鳴らして来訪の旨を告げる。エントランスのロックが解除された。

建物の外観は気にしない、内観はリフォームする予定だしクロスや建具などの見た目より設備や修繕状況、周辺情報などをしっかり確認しよう。事前にそう思ってはいたものの、見た目の印象にどうしても気持ちが左右されてしまいそうになる。

この感情は何かに似ているな、と考えてみると、ついこの間まで週末のほとんどを費やしていた婚活だと気づいた。「相手の見た目なんかよりも性格重視」。そういう人は男女ともに多いけれど、「その人のことをもっと知りたい」という入口に立つためには第一印象や見た目から受けるイメージがかなり重要だったことを思い出す。

私がこれから見る予定の物件には、現在1人暮らしの男性が住んでいる。フリーランスの仕事をしていて事務所を兼ねているらしい。

エレベーターで居室の階まで昇り、玄関前に到着した。
担当者が部屋のベルを鳴らし、2人でドアが開くのをしばらく待つ。

「あぁ…すみません。その…掃除するように言われてましたがあんまりその…時間がなくて」
売主はそういうと頭を掻き、「どうぞ」と小さな声で言った。

さらに、慌てた様子で玄関に散らばったいくつもの靴かきつめて端に寄せた。

私たちはその空いたスペースに自分たちの靴を脱ぎ、室内にあがった。
最初にリビングに通された。ここが事務所にもなっているようで、デスクやPC、本棚などがある。一応来客用のようなテーブルと椅子もあるけれど、テーブルにも椅子にも本棚に収まりきらなかったのだろう本が積み重なっていた。

1LDKだからあともう一部屋をプライベート用の部屋というか寝室に充てているのだろう。仮に私がここを買うとしたら私もそこを寝室にするだろうし収納スペースなんかを見たいけれど、なんとなく見るのが少し怖いような…。

「あの、今昼間なんでアレですけど、けっこう夜の眺めがいいんですよ。ここらは治安もいいし、駅からの道も明るい通りなんで安心です。まぁ見られて困るものはないはずなんで、どこでも好きに見て行ってください。散らかっててアレですけど、立地とか価格とかはね、その他と比べても良いはずなんでね」。

そう言うと、売主はPCに向かってしまった。

その後、寝室や水回りなどを一通り見せてもらい、私たちは部屋を後にした。

担当者は熱心に「このスペースはこういう風にも活用できますよ」など、できるだけ住んだ後のイメージをしやすいように説明をしてくれたので、私もメモを取りつつ、できるだけ現在見えているものだけではなく、家具がない状態の空間の広さやリフォーム後の様子などを想像してみたけれど、いかんせん内覧自体が初めてなのでイメージが難しかった。

でも確かに、私の抱える事情や希望の条件もしっかり把握してくれている担当者がおすすめしてくれただけあって、近隣の環境なんかも良さそうだし、生活に不便もなさそうだった。予算的にも問題はなさそう。売主さんも、快適に暮らしてはいる様子だったし…。

「ところで、今の方はなぜあの家を手放されるのですか?こういうことって聞いても良いものなのかわからないんですけど…」

次の内覧先に向かいながら、ふと湧いた疑問を担当者に尋ねてみる。

「もちろん聞いていただいて大丈夫ですよ。むしろ中古物件の購入を検討されている方でそこを気にされる方、とても多いんです。後になってから実はご近所トラブルがあった、なんていうことが発覚したりすると大変ですから。なので私たちも売主さまには必ず売却理由をお伺いしています。ちなみに今の売主さまはですね、ご実家を相続されることが急に決まって、故郷に帰るのだそうです」

「そうなんですか!ちなみに次のお宅は…?」

よく考えたら私にもいろんな事情や考えがあるように、家を手放す人たちにもまた人生があるのだ。その売却理由が購入の決め手や断念するまでの材料にはならないとしても、知らないでいるより知っていた方が確かに良い。一生ものの買い物だもの。

「次はえーと、○○駅が最寄りの2LDKの物件でしたね。こちらは、ご夫婦が住んでいらっしゃったのですが、離婚することになったので手放されることになったそうです。お二人ともすでに引っ越されていまして、空き室になります。さきほどよりはご自身が生活する姿をイメージしやすいのではないか、と(笑)。

ちなみにさらにその後にお伺いする予定のマンションは金銭的な事情でローン返済が難しくなったことが売却理由です。実は今出てきた3つは中古物件の売却理由の中でも割合としては多い部類に入るものなんです。中でもやはり離婚という売却理由は、昨今の離婚率の高さもあって増えていますね。

ファミリー向け物件ですと、子供が巣立って夫婦2人では広すぎるなどの家族構成の変化に合わせた住み替えのケースも増えています。つい先日も戸建てではありますが私が担当した物件がまさにそのケースでした。とても素敵なご夫婦で、特に奥様が家に大変な愛着をお持ちでして。そのせいなのか、なぜだか私にはその家にも魂があるように感じられましてね。はじめは家そのものが不安を感じているように思えたんです。でも修繕を進めていくうちになんだかいきいきしてきたように見えてきて。

結局これまた素敵なご夫婦に購入していただけることになったのですが、引き渡しの日には、家が寂しい顔をしつつも笑顔になったように私には見えました。なんだか不思議な感覚でしたねぇ。あ、話の方向がずれてしまいましたね」

担当者が語ったエピソードを聞いて、現在住んでいる実家が一瞬浮かんだ。私の家族の場合は兄一家がリフォームの後、同居することに決まっていて、これからもうちの家族が住み続ける。“家”はそのことや私が出ていくことをどう感じているんだろう。

そしてこれから私が購入することになる“家”は私を受け入れてくれるだろうか。

“家”に心があるとしたら…。そんな目線で相性を考えてみるのも楽しいかもしれない。ワクワクしながら2軒目のマンションに到着した。(続く)

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