スミタス小説家を買う

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スミタス小説「おひとりさま、家を買う」(8)

スミタス小説「おひとりさま、家を買う」(8)

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中古住宅が売買されるまでには、いくつものストーリーがあります。売主家族、買主家族、不動産業者やリフォーム業者など、売買に関わる人たち全てに日々の生活があり、人生があり、考えも思いもさまざま。

そんな、家の売買にまつわる物語をお届けするシリーズ。
第2弾の主人公は、東京の独身OLで実家暮らしをしている30代半ばの“私”です。

周囲に流されて始めた婚活を辞め、自分のやりたいことをやると決めた“私”。昔からの夢だった“カッコイイ”自分の家を持つことや憧れの北海道で暮らすこと、犬を飼うことetc…に思いを馳せ、夢の実現に向かって行動していきます。

インターネットを通して“おひとりさま”の家の購入や北海道への移住について調べていくうちに「札幌市内で中古マンションを購入してリフォームする」というアイディアにたどり着いた“私”は、中古物件に強く建物診断やリフォームなどのサポートにも手厚い不動産関連企業を見つけ、物件探しをスタート。周囲の理解も少しずつつ得られるようになり、内覧のため、ついに現地へ足を運びます。

1件目の内覧を終え、売主側にも人生があり、家を手放す理由もさまざまだと担当者に教えられた“私”。家そのものにもまた、売主と歩んできた人生のようなものがあるのだと感じます。自分がその家に住むイメージや、家との相性。私と家との“お見合い”は続きます。

(第8回)“決め手”になるものって何!?

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ある夫婦の離婚によって手放されることになったという2件目の家は、清掃や設備などの修繕も済んでいてどこもかしこもピカピカのように見えた。

「新築で購入してから15年経っているということでしたけど、すごく綺麗ですね。駅やバス停から少し遠いというのが私にとってはネックになるといえばなりますけれど…」

担当者と家の中をあちこち見て回りながら、1件目との違いに驚いて思わずつぶやいた。
家の中が綺麗というだけでこうも印象が違うのだ。家具なども置かれていないのでイメージもしやすい。

「そうですね、通勤となると毎日のことですしね。現状はこちらの駐車場には空きがありませんから、通勤手段をはじめとした生活の利便性を含めて慎重にお考えになるのも良いと思います。いずれワンちゃんを飼う予定があるとのことでしたので、間取りや近隣の散歩コースなんかもバッチリだとは思いますが…」

そうなのだ。ここでずっと暮らしていくとなると、ただ単に見た目が新しくて綺麗かどうかだけで、決めてしまうわけにはいかない。落ち着いていて周辺の環境は良さそうだけれど、利便性という点なら、近くにスーパーやドラッグストア、コンビニがすぐ側にあった先ほどの物件の方が良い。

「何が自分にとって優先すべき事項なのか、ですね…」

予算やローン、転職、周囲の理解。“家を買う”と決めてからずっとこの“優先すべきこと”を考える問題がついてまわっていることにあらためて気づく。

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金銭的な理由で家を手放さざるを得なくなったという3件目のお宅は、1件目と2件目の良いとこどりのような物件のように感じた。

築年数も浅めで、駅も近い。買い物利便性も良さそう。その分ほかの2件に比べて少しだけ予算が上がるのだけれど…。

売主は、少しずつ荷物を整理しているらしく、この日のために収納なども見られるようにクローゼットを空にしておいてくれた。売主一家は、私と同世代の夫婦2人暮らしで、ご主人も奥さんもニコニコしながら招き入れてくれ、積極的に案内をしてくれる。

2件目の物件は売主さんが不在だったこともあり、なんとなく家全体が無機質に感じた。無人状態の方が気兼ねがなくて良いという人もいるだろうけれど、なんとなく売主さんの人柄やどんな生活をしていたのかが垣間見えた方が私にとっては安心材料になる気がした。これは複数の物件を見ていろんなパターンを見てみなければ気づかなかったことだと思った。

「なんでも聞いてくださいね」

一通り家の中を見て回った後、奥さんが私に声を掛けた。“なんでも”と言われて、生活環境や近隣の情報など具体的なことを聞いてみようと思ったはずなのに、私の口から出たのは、私自身意外なものだった。

「どんな人にこの家に住んでほしい、と思いますか?この家をとても大切にされてきたように思ったので…」

夫婦はお互いの顔を見合わせて、私の質問の意図を考えているようだった。

「そうですね。こういうことを聞かれたのは初めてなので、なんだか照れくさいですが…大切にしてきた家なので、愛着を持って大事にしてくれる方が購入してくださるとうれしいですね」

ご主人の方がゆっくりとした口調で言った。

予定していた内覧をすべて終え、3件分の物件情報をあらためて見返してみる。実際に見学するまでは、紙の上での情報が全てだったし、どれも間違いなくその通りの状態だったけれど、それぞれ少しずつ印象が変わった。

この中から決めてしまうか、それとももう少しほかの物件も検討してみるか…。私にとっての最終的な“決め手”は何にあたるのか。ただ考えるだけでも大変だけれど、どこかこの大変さを楽しめているようになっている自分に気づいた。(続く)

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