中古の私が売れるまで

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中古の私が売れるまで(2)

中古の私が売れるまで(2)

中古住宅が売買されるまでには、いくつもの物語があります。売主、買主家族、不動産業者などの売買に関わる人たちには生活があり、人生があり、考えも思いもさまざまです。

そして、もし“家”そのものにも感情があって思いがあるとしたら?
“家”はどんな思いで自分が売買されていくのを見つめているのでしょう。
そんな“家”の視点から見た中古住宅売買の物語第2弾。

家主の高齢化により、売りに出されることになりそうな主人公の“家”こと私。
無事“貰い手”を見つけることができるのでしょうか?

(第2回)アラフォーの私、いくらで売れる?

「この家、売りに出して、こういうところで暮らさないか?」。

“私”を建ててくれた家主ご夫婦。ご主人は“私”を手放し、介護付マンションで夫婦2人、余生を過ごすことを検討しているみたいだけれど…。

「嫌ですよ。子供たちが帰省してきた時に帰ってくる場所がなくなってしまうじゃないの。それに、思い出だってたくさんあるし、最期の時もこの家で迎えたいもの」。

奥さんは言った。長い時を過ごしたこの家族の中でも、私と奥さんは1番一緒に過ごした時間が長いしきっと1番私に思い入れを持ってくれている。日々のお掃除や私の不具合を見つけてメンテナンスをしてくれていたのはいつだって奥さん。本当に私を大切に思ってくれていた。

でも、そんな奥さんと私の間柄だからこそわかる。最近の奥さんは足腰が丈夫じゃなくなっているってこと。私って一見おしゃれなんだけど、階段が古いタイプというかなんというか、急勾配なのよね…。ここのところは庭の手入れにも全然手が回らないみたい。外壁も相当傷んでいるのだけれど気がついていないみたいだし…。

正直、奥さんがこれまでみたいに1人で家のことを何もかもやっていくのは厳しいのかも、って私自身も思いはじめていた。

「数年に1度の子供たちの帰省のためだけに、こんな不便な家で暮らすこともないだろう。長男にこの家を譲ることも考えたが、あっさり『いらない』と言われた。もう家を建てちゃったし通勤と通学の事を考えたら引っ越したくないよ、と。長女も次男も売ることにも賛成だと言っている」

そうなのよね。実はご主人が奥さんには内緒で、お子さんたちに電話をかけている姿を見ていたわ。「いらない」という言葉には少し傷ついたけれど、長男さんは遠方で家庭を持って家も建てている。長女さんと次男さんもそれぞれの生活があるものね…。でも奥さんに相談もせず勝手に話を進めるのはどうなのかな、って思っていたけれど。

「みんながなんと言おうと、私はこの家に残りますから。あなた1人でマンションで暮らせば良いでしょう。実は前々から私にも考えがありました。老後、あなたと2人きりで暮らしていくのはどうなのかなって…」

「離婚したいということか?」

奥さんったら、芯が強いのはとっても良いところだけど、意地を張るのはよくないな。でも仲間の“家”たちの話を聞くと、子供が巣立ってひと段落したら離婚してしまう家庭も増えているんですってね。熟年夫婦だけでなく、やはり「離婚」というキーワードをきっかけに家を売りに出すっていうケースは結構あるみたいだけれど…。

離婚以外だと、お金の問題もあるみたい。ご主人が経営に失敗してしまったり、いろいろな原因で借金を背負ってしまってローンを払いきれなくなってしまったり。

家を手放す話って大抵がそんな風に前向きな理由じゃない話題が耳に入るのよね。もちろん栄転での転勤や、事業で成功してもっと大きな家に移り住むために、なんていうポジティブな理由もあるにはあるそうだけどやっぱり不幸話の方が印象に残るのよね…。

私の場合も、家主さんとは悲しいお別れになってしまうのかな…。

夫婦の話し合いは平行線のまま数ヶ月。そんなあるとても寒い日。奥さんが雪かき中に足を滑らせて骨折してしまった。

玄関のアプローチに続く外の階段部分は、実はこれも急勾配な上にすぐに氷が張ってしまって老若男女問わずとっても滑りやすい造り。いつか誰かが怪我をしてしまうのでは、と不安だったけれど、まさかこの家こと“私”を知り尽くした奥さんが骨折してしまうなんて!

入院中、ご主人や子供たちに説得された奥さん。家に戻り、外側から私を隅々まで見渡した後、涙を浮かべながら言った。

「査定だけでも、してみようかしらね。古い家だけどこの家は良い家だもの」

車椅子姿なのがまたひときわ悲しいけれど、私もそれが良いと思う。だって私は、最近では当たり前にもなりつつある“バリアフリー”なんていう構造じゃないのだし、足が治るまでの間ですら、きっと不便を強いることになってしまうもの。
決意が固まると女性の行動力ってすごい! あっという間にいくつか近隣の不動産会社に連絡を取って、何社かの査定を受けることにしたみたい。

今日は待ちに待った1社目の訪問。いわゆる大手と呼ばれるところのベテラン営業マンがやってきて私に値段をつけてくれるそう。

ご主人も奥さんもとっても緊張しているみたいだけれど、きちんと私の良いところや、ちょっぴり気になっているボイラーが時々不具合を起こすことなんかも説明してくれている。この日のために、お子さんたちもお掃除を手伝ってくれたんだもの。私だって気合い十分!

でもなんだか変な感じ…。私自身も査定を受けるなんて初めてだから、よくわかっていないけれど、中古住宅の査定ってこういうもの!? 営業マンは、さっきからご夫婦の話を聞いているようで全然聞いていないみたいに見える。
「いや築40年弱でこの状態はかなり良いですよ」「あぁそんなに修繕の必要なんかもないですね」と私のことをやたら褒めてはくれるのだけれど、メモを取ってるように見えていたノートには何にも書いてないのよね。

しかも、査定書というのかしら? ちらっと見えてしまったのだけれど、すでに金額が書き込まれている。これは一体どういうこと? もしかして私の値段、査定する前から決めていたっていうこと!?

「これなら、この状態でもうすぐにでも売れますよ。そうですね、今いろいろ見せていただいて、お話も伺って、だいたいこれくらいになるのかなっていう感じなんですけれど」。

急に電卓を叩き始めて営業マンはそう言った。その金額はご夫婦が考えていたよりずっと高額だったみたいだけれど…。私からするといったいどこを見てそう判断したの?っていう感じ。私の本当の姿なんてちっとも見ていなかった上に、あらかじめ決めてきた金額に合わせて電卓の数字を打ち込んでいただけにも見えたけれど…。

「ほう、こんな値がつくのか」
ご主人ってば金額だけで何だか満足してそう…。

「でも、修理が必要な箇所もあるでしょうし、何より古い家ですし。ここは、そんなに便利な場所に建っているわけでもないでしょう。本当にこの金額で売れるんでしょうか?いつまでも買い手がつかないなんてことにならないかしらね」
よかった。奥さんはちょっぴり疑いの目を持ってくれているみたい。

「確かにこの金額で売却できるのはウチだけでしょうね。他社さんではこうはいかないはずですよ。ぜひ当社に売却をお任せください!こちらの物件を気に入りそうなお客様が5組いますのですぐにご紹介したいです」

これが敏腕営業マンというものなのかとある意味感心してしまう。さっきから理屈や不動産にまつわる情報は一切なしで、勢いだけで話を推し進めている感じ。

「なるほど。さすが大手さんですな」
もう!本当にご主人ってば! ほとんど任せる気になっているみたいだけれど、会社名だけで信用してしまっていいの?

「とりあえず、他にも見てもらってから決めたいと思います。私たちも初めてのことなので、勉強しながら進めていきたいので」
しっかり者の奥さんで本当によかった。ね?ご主人。

とはいえ、慎重すぎていつまでも売れない、売れ残りのままっていうのも嫌。
さてさて、私はどこの不動産業者さんに媒介してもらって、どんな貰い手さんに見初めてもらえるのかしら。まだまだスタート時点にも立っていないような感じだし、あれこれ不安は尽きないけれど…。(続く)

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