中古の私が売れるまで(6)

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スミタス小説「中古の私が売れるまで(6)」

スミタス小説「中古の私が売れるまで(6)」

中古住宅が売買されるまでには、いくつもの物語があります。売主、買主家族、不動産業者などの売買に関わる人たちには生活があり、人生があり、考えも思いもさまざま。

そして、もし“家”そのものにも感情があって思いがあるとしたら?
“家”はどんな思いで自分が売買されていくのを見つめているのでしょう。
そんな“家”の視点から見た中古住宅売買の物語第6弾。

家主の高齢化により、売りに出されることに決まった主人公の“家”こと私。家主夫婦は、とある大手の不動産会社と「専任媒介契約」を締結。すぐにでも買い手がつきそうな雰囲気だったのに、なかなか担当者からの連絡はありません。

きちんと“私”を売るために宣伝してもらえているのか夫婦も“私”も不信感を持ち始めた頃、ようやく「内覧希望」のお知らせが。私の“貰い手”がついに見つかる…??

(第6回)私、ついに値下げの危機!?

きょうは、ついに私がお披露目される日。担当者は内覧希望のご家族を連れてやってくる。奥さんは朝からそわそわ。きょうまでに新しいスリッパも新調して、娘さんを呼んで家中を掃除して…。

「担当の方は現状の暮らしているままでいい、何もしなくてもいい、ってことでしたけれど、本当にこのままで良いのかしら? 傷もそのままだし、収納なんかも、ものを入れっぱなしだから、ちょっとお見せするのはどうかな、と思うけれど…そういうところは見せなくてもいいというし…。でも収納スペースってやっぱり見ておきたいのじゃないかしら。特にうちは古い家で、そんなにスペースは広くないのだし…」

「いいんじゃないか。一応は掃除もしたんだし。とにかくあの値段と現状の物件情報で見に来てくれるということなんだから…」

心配性の奥さんに対して、ご主人はどこか楽天的。少し前までは、全然連絡がないことを気にして、ようやく担当者に対して少し不信感を持っていたご主人だけれど、内覧希望の連絡ですっかり吹き飛んでしまったみたい。

そりゃあ確かに「専任媒介契約」の期間が終了間近ギリギリのタイミングで、1組にでも私を見てもらえることになったのだから、私も良かったなぁ、とは思うけれど…。

玄関のチャイムが鳴った。
担当者が30代のご夫婦と小さなお子さんを2人連れてやってきた。

私が建った約40年前のことを思い出す。鍵を回してドアを開け、目をキラキラさせていた笑顔いっぱいの家主家族たち…。

内覧が始まった。
担当者は「家に関しての説明は基本的に私からしますので、ご夫婦は何もお話ししなくても大丈夫です。直接質問があった場合だけお答えくだされば」と言っていたのだけれど…。

ご主人は、セールスマンだった会社員時代の自分を思い出したのか、それともやっぱり担当者との間に信頼関係ができていないからなのか「駅までは、あなたたちの若い足なら10分もかかりませんよ」「そうですね。スーパーやコンビニまではちょっと遠いんですが、かえってまわりが静かで良いでしょう」などなど。勝手に“セールス”をはじめちゃった。

担当者も負けじと私の良い点を挙げてはくれるのだけれど、ご主人も担当者もちょっとそれ、「“私”を売り込むにはピントがずれてるんですけど!?」「しかもなんか“盛って”るんじゃ!?」っていう内容が多くて、私も奥さんもヒヤヒヤ。

内覧希望のご家族が知りたいこととちょっと違うようなことが多いみたいで、見学しながら終始苦笑い。

新築時代の私を見て、目をキラキラさせていた40年前の家主家族のようにはいかなくったって、もう少し楽しみながら“私”を知ってもらいたいのに…。

「生活感がありすぎて、ご自分たちが暮らすイメージを持ちづらいかもしれませんね…」と奥さんは気遣っているけれど、余計なことは話してはいけないと思っているみたい。不具合なんかの説明は「言った方が良いのでは?」と迷いながらも言い淀んでいる感じ。

こうしてあっという間に終わってしまった内覧。予想はしていたけれどやっぱり縁がなかったってことになったみたい。

「やっぱりこの家を売り込むには、もう少し工夫が必要なんじゃないのかしらね…。こんな老夫婦が暮らしている様子そのままじゃ、若いご夫婦には魅力的な家には見えないと思うの。それにやっぱり信頼できる方にセールスをしてもらった方が良いわね。あなたも住宅のセールスマンではないのだし…。もう少し親身になっていただけてお任せできるところに仲介業者を変えましょうよ」と奥さん。

ご主人は「そうかもしれないなぁ。でもどこも同じなんじゃないか? 見積りを出してもらった時なんか、色んなところに頼んで、色んな不動産業者に会ったけれど、どこも同じような売り出し方の提案だったじゃないか」と業者を変えることには気乗りしないみたい。

確かにどこも同じような雰囲気ではあったけれど。なんだかあんまりにも積極的に売り出さずに、売れない期間を無駄に引き伸ばされているように私には感じられるのだけれど。でもどういう理由なのかしら? 売れた方が担当者だっていいだろうに。

ご夫婦が迷っているうちに後日、担当者から連絡が来た。

「先日も少しお話ししましたが、やはり値下げをしましょう。現状引き渡しですし、もう少し相場に合わせても良いかな、と。いやぁ、本当にいい家なので、できれば私も下げたくはないのですが、少しでも早く売れた方が良いでしょう」

やっぱりね…。私、値下げされるのね。いつまでも“売れ残り”の気分を味わうことになるよりはいいのかもしれないけれど…。(続く)

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