中古の家が売れるまで

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中古の私が売れるまで(11)

中古の私が売れるまで(11)

中古住宅が売買されるまでには、いくつもの物語があります。売主、買主家族、不動産業者などの売買に関わる人たちには生活があり、人生があり、考えも思いもさまざま。

そして、もし“家”そのものにも感情があって思いがあるとしたら?
“家”はどんな思いで自分が売買されていくのを見つめているのでしょう。
そんな“家”の視点から見た中古住宅売買の物語第11弾。

家主の高齢化により、売りに出されることに決まった主人公の“家”こと私。紆余曲折を経て家主夫婦は“建物診断”に力を入れている不動産会社に“私”の売買を任せることに。

家を売りに出すことを決意してから、何かと意見が合わないことが多かった2人ですが、ようやくここへ来て同じ方向を見つめられるように。建物診断の結果をふまえ、劣化箇所などの修繕プランの作成がスタート。“私”を、魅力的な商品として売り出すべく、着実に一歩ずつ理想の売却活動への道を歩んでいます。

長年暮らしてくれた家族との別れを惜しみつつ、“私”は新たな“貰い手”と過ごすこれからの日々にも少しずつ期待を持つようになり…。

(第11回)「売活」(売却活動)は順風満帆!?

計画通りにリフォームプランが確定し、私は無事“魅力的な商品”となった、、、はず。

建物診断であちこち傷んでいるところが発覚した時は、年を取った自分を認められずにショックを受けたりもしたけれど…。でも、こうして必要な箇所はきちんと修繕プランが出来上がっているし、貰い手となる新しい家族に数十年の歴史を刻んでもらえる家でいられるようにまだまだ頑張らなきゃね。

新築だった頃の私。とってもピュアで期待に胸いっぱいだったっけ。
そうそう。私って住宅業界では大きな転換の年だったともいわれる1981年生まれなのよね。
この年の6月に建築基準法が改正された。私は当時、この辺りでは他に誰も経験していなかった法改正後の厳しい「建築確認」をパスした最初の家だった。

耐震性に関する基準が大幅に変わり、「ちょっとやそっとの災害じゃ倒れたりしない家」という自信を持っていたのだけれど、これまでにも大きな地震があるたび基準は見直されていて、より高く、安全を目指すものになっているそう。つまり最近の若い家って、一見チャラチャラしているように見えても、実は厳しい耐震基準クリアしているっていうことになるのかしら。

家主ご夫婦がまとめたスクラップ記事によると、これからの時代、新築はあんまり増えないのだとか。国をあげて、新築よりも中古住宅の流通を促進していく方向に法律や体制も変わるのだそう。

これまでは人が住まなくなったら、家としての役割は終わり、建物としての自分たちはこの世からいなくなってしまうってケースが多かったけれど、これからは私のように“受け継いでもらうもの”になるケースがどんどん増えていくっていうこと。

少し時代が違えば、私は今ごろ土に還っていたかもしれないし、家主夫婦の選択や不動産業者が違っていても、全然別の結末が待っていたはず。

どうなってしまうのか、と何度思ったかわからないくらいだけれど、ここまで来るのに私自身も学ぶことが多かった。買主が決まるその日まで、まだまだ気は抜けないのだけれど。

以前は、待てど暮らせど、内覧希望者が訪れることのなかった“私”。たった1組、ようやく来てくれたご家族に対してご夫婦はうまくアピールすることもできず…。今思えばあの時の条件は「現状引き渡し」だったのだし、建物としての私は「パッと見は実際の築年数より綺麗」という以外、自信を持ってPRできるようなところって全然なかったのよね。

仲介業者が変わるとお客さんの雰囲気も変わるのか、仕切り直ししてから見学に来てくれた数組のご家族は、あらゆる意味でとても熱心。自分たちの理想のスタイルがすでに完成していて、頭の中でインテリアを配置しながら家中をしっかり見て回るご夫婦もいれば、水回りや建具の写真を撮影していく旦那さん、生活環境やご近所付き合いについて細かくメモを取る奥さん。タイプはさまざまだけれど、みんな“私”と暮らすことを頭に描きつつ、理想の家探しをしているのだとよくわかる。

どんな人が私を貰ってくれるのか。そりゃあ私はただの家だから、自分から希望なんて言えないけれど…。

「ところでお母さんたちは、どんな人にこの家を買ってもらいたいの?」

ある週末。内覧を済ませた家族を見送った後、庭先で家主夫婦の長女が尋ねた。高齢のご夫婦を気遣って、掃除や来客の対応などを手伝いに来ていたのだった。

「そうね。こちらが希望をいうようなことではないのだろうけれど、この家を好きになってくれる人が良いわね。できればせっかくだからこの庭に花が絶えないようにしてくれる人だと言うことないわね」
色とりどりの花が咲く丹精した庭を見下ろしながら奥さんが言った。

「買い手が共働きの忙しいご夫婦だったりすると、この庭は手入れの簡単な人工芝にチェンジ、とかってこともありそうね。私もできれば小さい頃に駆け回ったこの庭がこのままだといいなぁとは思うけれど、私が管理してきたわけでも、この先できるわけでもないしなぁ」

「理想を言ったまでだから、もちろんここが一面の人工芝になったって私は構わないのよ。今の時代にあった暮らし方に変えられる余地がたくさんある方が、買い手もつきやすいでしょうし」

「でも、どうせならこの庭ごと気に入ってもらいたいものだな。せっかくこの間、ブランコも直したし」
奥さんと長女の会話に入り込むようにして、ご主人が言った。

「あら。お父さんは、ただただこの家が高く売れればいいと思ってるんだとばかり…」
長女がからかうようにご主人を見つめる。

「あれから考えが変わった」
照れた表情のご主人がつぶやくのと同時に、玄関のアプローチに人影が現れた。

きょうはもう1組、内覧希望のご家族を案内することになっているのだ。
このご家族は、私を気に入ってくれるだろうか…?(続く)

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