中古の家が売れるまで

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中古の私が売れるまで(16)

中古の私が売れるまで(16)

中古住宅が売買されるまでには、いくつもの物語があります。売主、買主家族、不動産業者などの売買に関わる人たちには生活があり、人生があり、考えも思いもさまざま。

そして、もし“家”そのものにも感情があって思いがあるとしたら?
“家”はどんな思いで自分が売買されていくのを見つめているのでしょう。
そんな“家”の視点から見た中古住宅売買の物語第16弾。

家主の高齢化により、売りに出されることに決まった主人公の“家”こと私。

不動産業者選びの失敗や知識不足を解消しながら、建物診断を経て必要箇所の修理をしたり、劣化箇所の修繕プランを作成したりするなど家主夫婦の努力の甲斐もあり、“私”は、ようやく理想的な買主夫婦と巡り会います。

慎重に検討を重ねた買主夫婦たちにとっても納得のいく形で契約を結ぶことができ、売主夫婦が家を明け渡す日が刻一刻と迫ってきて…。

(第16回)“お別れの日”売主夫婦の引っ越し

引き渡し日から数えてちょうど1週間前にあたるよく晴れた日。

家主夫婦がとうとうこの家を去る日が来た。引っ越し準備をしてみると、40年近く住み続けた家の中は想像以上に荷物が多かったみたいで、着物やお気に入りの食器、たくさんの本など、一部は3人のお子さんやお孫さんたちに譲ったり、リサイクルショップに売却しに行ったりと、準備を始めてからの後半は駆け足気味に過ぎていった。

それでも家主ご夫婦の気持ちは終始穏やかだった。これから住むことになる高齢者向けマンションの入居者向けのしおりを読んで今後の暮らしぶりを想像しながらお茶を飲んだり、引っ越しの直前まで家の掃除や庭の手入れをしたりしていた。

3人のお子さんとその連れ合いや、お孫さんが珍しく全員集合した。引っ越し業者を呼ばずに家族だけで荷物を運ぶのだそう。久しぶりに集まり、賑やかなみんなの様子を見ていると、まだ若かったご夫婦や小さかったお子さんたちのことが昨日のことみたい。

下の息子さんが借りてきた小さなトラックにちょうど1台分。みんなで協力しながら、衣服や生活用品を詰め込んだダンボールを一つ一つ荷台に詰め込んでいく。娘さんは、掃除をしながら、小さなお孫さんが庭のブランコに乗る姿や庭の花、かつて少女だった時の自室を写真に収めていた。

最後の一箱を積み終えると、奥さんが思わずエプロンのポケットからハンカチを取り出し、涙をぬぐう。

「とうとうお別れね」

「湿っぽいのはやめようっていったじゃない」
娘さんが奥さんの肩を抱いてそう言ったけれど、その娘さんの目にもうっすら涙が浮かんでいる。

トラックにエンジンがかかり、目的地に向かって走り出す。ご夫婦や家族を乗せた車もトラックに着いていく。ここから動くことができない私は、ただ小さくなっていく車を見つめるだけ。

きょうまでにもらったたくさんの「ありがとう」を、私も言葉で伝えられたらいいのに。

涙のお別れから1週間。こんなに長く家の中に誰もいない状態は、よく考えたら初めての経験だった。しかも、買主夫婦の希望で一部残された家具を除いて、がらんどうなのもとっても寂しい感じがした、

買主夫婦が早く引っ越してきてくれることを楽しみにしつつ、まずはその前に“私”はリフォームされることになっている。

まずは建物診断の結果判明した修繕が必要な劣化箇所をしっかりと直してから、その次にデザイナーさんが素敵に変身させてくれるのだそう。

一部の修繕はすでに売主夫婦の時に体験済みだし、ガタがきているところを直してももらえるのはとってもありがたいのだけれど…。実は私、デザインの部分はちょっと不安。なんていうか私ってそもそも外観も内装も今流行りの感じじゃないから、おしゃれなデザイナーさんの手にかかると、元の「私」とはまるで違う誰かになっちゃうんじゃないのかなぁ…って。

売主夫婦が本当に大切にこの家で暮らしてくれただけに、私自身が気に入っているところもたくさんあるのよね。

とはいえ、何年も空家状態で廃墟になってしまった友人や、まだまだ若いのに更地にされてしまった知人の話も聞くわけだから、これはわがままな悩みかもしれない。

まずは買主夫婦とデザイナーさんの計画を楽しみに待っていよう!(続く)

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