中古の私が売れるまで(18)

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スミタス小説「中古の私が売れるまで(18)」

スミタス小説「中古の私が売れるまで(18)」

中古住宅が売買されるまでには、いくつもの物語があります。売主、買主家族、不動産業者などの売買に関わる人たちには生活があり、人生があり、考えも思いもさまざま。

そして、もし“家”そのものにも感情があって思いがあるとしたら?
“家”はどんな思いで自分が売買されていくのを見つめているのでしょう。
そんな“家”の視点から見た中古住宅売買の物語第18弾。

家主の高齢化により、売りに出されることに決まった主人公の“家”こと私。

数々の困難を経て理想的な形で売買を進めることができた家主夫婦が、“私”から引っ越し先の高齢者向けマンションへと旅立って数日。

若い買主夫婦へと引き渡された“私”のリフォームがスタートします。まずは建物診断の結果を踏まえてクロスの貼り替えや水周りの交換などの工事が順調に進む中、住まいに対するこだわりが深い買主夫婦は駐車スペースの拡大問題で意見が真っ二つに…!?

(第18回)夫婦の危機!?“カエデの木”事件

庭そのものも気に入っているため、庭ごとそのまま残して、もちろんカエデの木もそのままにしておきたい奥さん。どうやら、駐車場を別の場所に借りることや、車を手放すことも考え始めているみたい。

一方、車2台分の駐車スペースを用意することは必須だと考えているご主人は、庭の一部を潰し、2台分のカーポートを設置するか、いっそのこと庭のほとんどを解体して趣味スペースも確保できるガレージを設置したい、いう希望を持っている。

私に意見することが許されるなら…。まず奥さんの案はちょっと非現実的なようにも思える。以前の家主夫婦の奥さんも車は持たず、特に不便なく暮らしていたのだけれど、奥さん同士のライフスタイルが全然違うものね。買主夫婦の奥さんの場合は、職場の位置関係から考えても通勤に自家用車が欠かせないようだし。

ご主人はアクセスの便利な都心に勤めているそうだから、通勤のことだけ考えると車が必須ではないのは、むしろご主人の方、ということになるみたいだけれど、車いじりが趣味のご主人にとって車を手放すことは考えられないみたいだし…。やっぱり現実的なのは「カエデの木については諦める」っていうことなんじゃないかな、と思う。

「本当にどうしたらいいのかしらね…」。

庭を眺めているうちに良いアイディアが浮かぶのではないかと、工事の様子見がてら“私”の元へ訪れた買主の奥さんがつぶやく。

「君が庭のことや木のことを諦めさえすれば解決する問題なんだけれどね」。
ご主人は困った顔で笑いながら言った。

考えがまとまらないまま、そして奥さんが納得する方法が見つからないまま、駐車スペース問題はいったん、保留となったみたい。

その間にリフォーム工事はプラン通りにどんどん進む。壁や床が新しくなると、それだけでこんなにも印象が変わるものなのね。ドレスアップしたみたいで私はすっかり気分も晴れやか。

工事が着々と進む中、買主夫婦が再び様子を見にやって来た。
季節は変わってカエデがすっかり色づき、一番の見頃を迎えていた。

どういう話し合いがあったかはわからないけれど、奥さんは何かを納得した様な表情でカメラを構えた。

カエデの木全景、カエデの葉のアップ、私とカエデ、庭全体とカエデ。いろんな画角で何枚もシャッターを切っていく。

「できれば売主ご夫婦をお呼びできれば良かったわね…。せっかくだから最後にセルフで、カエデを背景に私たち夫婦の記念写真でも撮りましょうか?」

写真に収めて思い出に残そうっていうことになったのかしら。ということは、カエデを切り倒すことに、ついに奥さんも賛成したということなのね。

「それにしても見事だな」

ご主人が真っ赤に色づいたカエデの落ち葉を拾い集めながらいう。

「やっぱり…残そうか。何か方法がある気がする」。
ご主人がつぶやく。

突然翻ったご主人の意見に、目を見開く奥さん。

「本当?実はね、私この間計算してみたのだけれど…。カーポートの屋根を一部くり抜くかなんかして、枝葉をそこから出させるようにすれば、切り倒したり、植え替えたりしなくてもイケる気がするのよね。というのも、このカエデってちょっと湾曲しているの。カーポートを作る予定の場所に丸々被って生えているかのような気がしていたんだけれど、よく見ると根を張っていると想定できる場所から考えると、たぶんこのままでも2台分収められそうなの。方法はあると思う!」

奥さんは、ギリギリまでカエデを残せる方法を考えてきたのね。

「そうなのか。建築士の話では切り倒すのが一番ということだったけれど…。残したいという意見を伝えたら、違う方法を考えてもらえるかもしれないし、樹木医なんかにも相談してみるのが良いかもしれないな」

意見が分かれていた頃は、ちょっぴり雰囲気が怪しくなった2人だったけれど…。なんとか同じ方向性にまとまって良かった。外から見ているだけでは「え?そんなことで気まずくなるの?そんなことでもモメるの?」と思うことばかりだけれど…。

でも家にまつわることって、ほとんどが一生もののことだし、そりゃあ意見が合わなければ納得できるまで突き詰めようと思うものよね。こういうのを一つ一つ乗り越えて、家族の絆や家への思い入れを深めていくものなのだと思う。さて、カエデの木はとりあえず一件落着だけど、この先も買主夫婦がこの家で暮らすまでには、まだまだ日がある。一難去ってまた一難の予感もするけれど…。(続く)

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